2017-02-10

これは…愛?宮崎駿、『かぐや姫の物語』の翁を描く→断られる


宮崎駿さん、自分が監督でない時にもたびたび顔をだすようです。マーニーのときも現れ、色々と口を出しては断られていた(笑)ようですが【参照:「舞台は瀬戸内」宮崎駿、『思い出のマーニー』にやっぱり口を出していた&無視されていた!、どうやら高畑監督の『かぐや姫の物語』にも口を出していたそうです。

今回は、スタジオポノックのLINEブログから、そのエピソードをご紹介します。(初出はauスマートパス会員向けサイト「ジブリの森」)

以下、その部分を抜粋します。
そんなある日、「かぐや姫」準備室に、宮崎さんが顔を出した。

宮崎さん「パクさん、爺さんの家、こんなのどうかな?」

 そう言って宮崎さんは、1枚の絵を高畑さんに提出した。それは、ザザっとした線で描かれた翁の家のイメージスケッチだった。中国の山水画のように屹立する崖の上に、ポツンと小さな家がある。ちなみに、宮崎さんは企画内容を知らないし、脚本も読んでいない。ただ、「かぐや姫」を作ることだけを知っていた。

宮崎さん「爺さんは、こういう所に住んでいるんですよ。崖の中腹に猫の額ほどの畑があって、毎日、毎日、この崖を降りたり、上ったりしてるんです。」

高畑さん「あはは、まぁ、面白いけど、違いますね、こういうんじゃない。」


 その翌日、また宮崎さんが絵を描いてやってきた。

宮崎さん「パクさん、爺さんの家は、こうやって都を一望できる山の中腹くらいにあると思うんです。そこから、いつも都を眺めてるんですよ。いつか京の都に上ってやるとか、そういう野心もある人物なんです。」

高畑さん「はぁ……。まぁ、こういうんじゃないですよ。」


 宮崎さんは、その後も数回に亘って、高畑さんや、隠れて田辺さんにも、「こういう絵でどうだろう?」と提案を続けた。絵を提出するときの宮崎さんは嬉しそうで、けれど高畑さんを前にして、緊張している様子だった。むかし、ふたりが一緒にアニメーションを作っていたときは、こうしてやり取りしていたのだろう。しかし、高畑さんは実に素っ気無いかった。

高畑さん「どういうつもりでしょうね、宮さんは。いや、上手いし流石だけど、こういう広角(レンズ)で捉えたようなのは違うんですよ。それに今回、ジブリが、まぁ、宮さんがやってきたようなポスターカラーで緻密にやってく美術とは違うのを目指しているじゃないですか、こちらは。」

こちらが翁です。(一応)

なんだか一方的な愛情に見えるのは私だけではないはずです(笑)このような「一方的な愛情」はこれだけでなく、鈴木プロデューサーによるとこの二人はこういった関係が続いているようで、かぐや姫の時、高畑さんの望む絵を描けずに怒られているスタッフに対して、それをなぜかこっそり聞いている宮崎さんがその注文通りの絵を描き、怒られたスタッフに「こういう絵を描くんだよ」と見せていたこともあるそうです。

宮崎さんにとっては、今でも認めてもらいたい尊敬する相手、なんでしょうね。


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