2016-12-02

オーストラリアにはジブリのモデル地は(まだ)存在していません


スタジオジブリの作品には、モデルになった場所がいくつか存在します。しかし、モデル地でないにも関わらずモデルであるかのように言われていたり、意図的に嘘をついている場所もありジブリのモデル地問題は非常に面倒な状況になっています。この問題は当ブログでも何度か言及しておりますが(例としてこちらまたはこちらをご参照ください)、嘘やデマであることが問題であり、単に「似ている場所」ならば皆で楽しめば良いことだと個人的には思っております。

さて、ネットではオーストラリアにはいくつかジブリのモデル地が存在していると言われているそうです。本当でしょうか?書籍宮崎駿全書』によると、こうあります。

 オーストラリアには「宮崎がロケハンをして作品のモデルにした」と語られている観光スポットが多数存在するが、事実無根である。特に『ラピュタ』『魔女の宅急便』のモデルと言われる場所は数多く、数多くの観光サイトで「日本人必見」などと紹介されている。具体的には以下のような場所がモデルと称されている。

『天空の城ラピュタ』
・タスマニア、ルーンリバーの土ボタル(飛行石)
・タスマニア、ビッグツリー(ラピュタの大樹)
・ケアンズ郊外、パロネラパーク(ラピュタ内部)
・クイーンズランド、マウントアイザ(炭鉱施設)
・アサートン高原、カーティンフィグツリー(ラピュタの大樹)

『魔女の宅急便』
・メルボルン、フリンダース・ストリート駅(コリコの時計台)
・アデレード郵便局(コリコの時計台)
・タスマニア、ロスのパン屋(グーチョキパン屋)
・タスマニア、州都ホバート(コリコの町)
・インディアン・パシフィック鉄道(冒頭の貨車)

単に「ロケーションが似ている」という場所なら世界中に在るはずだが、オーストラリアの場合は、観光ガイドや添乗員が「ここがモデルだ」と断定して観光を勧めるなど、度を越している。「単なる噂」の類なら問題はないが、一切事実確認を行っていないにもかかわらず、堂々と「ここが現場だ」と宣伝するのはおかしな話である。オーストラリア観光に際し、「宮崎監督の足跡を辿る」ことが日本人観光客の特典の一つになっているとすれば、問題があろう。

これだけ多くの場所が言われているという点に驚きですが、全て事実無根であるという点も驚きです。ちなみに私もラピュタ、魔女の宅急便の資料集をよく読み込んでいるほうだと思いますが、『オーストラリア』という文言は見たことがありません。

さて、この件は「事実ではない」という確たる根拠があります。それはスタジオジブリが公式に否定しているという点です。

以下、ジブリ公式サイト内のジブリ日誌 2002年12月10日より抜粋です。
いつ頃からか知りませんが、ジブリ作品のモデルとなった場所がオーストラリアの至る所にある、という話が一部で広まっているようです。そういうことは特に無いのですが、単なる噂ではなく事実として受け止めている人もいるらしく、ごくたまに問い合わせがあったりします。

 なぜこういう話が広まったかは不明ですが、これまで私が聞いた話から想像するに、発端は「風の谷」だったようです。

 オーストラリアの某所には、本当に「風の谷」という名前(もちろん英語でしょう)の場所があるらしい。で、現地を訪ねた「ナウシカ」を知る人が「ここはもしかしたらナウシカに出てくる風の谷のモデルかもねー」というような話を誰かにしたところ、いつの間にか「モデルかもねー」が「モデルらしい」、しまいには「モデルだ」という風に変化してしまった。で、「ナウシカ」があるなら他の作品もあるのではということで、モデルとされる場所が次々に“推定”され、“推定”が“断定”化されていった、と。

 ジブリ作品でも、ものによっては実在の場所をモデルにしたり参考にしたりしているケースが勿論ありますが、少なくとも、オーストラリアについてはそういう場所は存在しません。にもかかわらず、こういう話がある程度広まるというのは、ほんと、噂とは妙なものですね。

このように『風の谷のナウシカ』のモデル地と言われている『風の谷』も合わせて完全に否定されております。残念ながらオーストラリアにはジブリの公認しているモデル地はないのです。

ちなみにこちらがオーストラリアの『風の谷』だそうです。
ナウシカっぽさはないと思いますが…。

つまり、どこの誰が『何を根拠に』言っているのかわからない情報は、基本的には信じないほうが良いというのが、ネット・ネット外問わず、情報を信じる上での原則ということでしょう。酷いことに、そこがモデル地であるかどうかわからないにも関わらず、故意に私たちを騙している場所がある以上、私たちも用心深くいる必要があるようです。

最後に、ジブリもモデル地に関しまして、スタジオジブリからの見解をご紹介しておきます。

スタジオジブリ作品のうち、ここが舞台です、と公式に表明できる作品は多くありません。様々な地域が部分的に取り入れられている作品がほとんどです。さらに、言うまでもないことですが、映画の中には完全な創作で場面が設定されているシーンも、もちろんあります。だから、実際に訪ねられても全く同じ風景に出会うことはないと思います。



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