2014-03-17

『紅の豚』 絵コンテのエンディングではカーチスが大統領になっていた!


スタジオジブリ第6作目の作品『紅の豚』。
(トップクラフトのナウシカを含めると7作目)

カッコイイとは、こういうことさ。

もともとは30分程度のOVA作品の企画として立ち上がりましたが、原作となる『飛行艇時代』が雑誌「モデルグラフィックス」に描かれ、紆余曲折を経たのち、劇場用映画として製作。1992年に公開されました。

そんな原作といえるマンガ『飛行艇時代』が収録されているのが、宮崎駿の趣味全開の傑作コミック本『宮崎駿の雑想ノート』です。この本、密度が濃い!オススメです。

宮崎駿の雑想ノート
宮崎駿の雑想ノート宮崎 駿

Amazonで詳しく見る

そんな『紅の豚』ですが、本編と絵コンテでは、エンディングに少し違いがありました。

まずは映画本編の終盤から振り返ってみます。ポルコとカーチスの決闘は、いつしか素手での殴り合いに。激しい殴り合いの末、なんと二人はダブルノックアウト!

海に沈んだまま起き上がれない二人。そのままカウントが続いていく。相打ちか!?と思われたその時、ジーナがポルコに近づき一言。「マルコ、マルコ聞いてる?あなた、もうひとり女の子を不幸にする気なの!?」この一言でかろうじて起き上がり、勝利するポルコ。

しかしポルコは、フィオをジーナに任せてむりやり自分の元から離すことに。

イタリア軍出動の情報を知り、散り散りに去っていく空賊たち。残ったポルコとカーチス。「イタリア空軍をよそに引っ張っていくか?」と問いかけるポルコだったが、そんなポルコを見たカーチスが驚愕する!

一体、カーチスが見たポルコの顔とは…!?

…そしてフィオの回想へ。ポルコはそのままフィオの前に姿を現さなかったこと。その代わりジーナとの友情関係が続いたこと。あれからいくつも大きな戦争や動乱があったこと。ジーナの店には今もなじみの客(マンマユート団ほか空賊たち)が来ていること。

ドナルド・カーチスは俳優になっていた。フィオ「そうそう、まだ大統領にはなってないけど、ミスター・カーチスも、時々手紙をくれる。『あのアドリア海の夏が懐かしい』って。」

「ジーナさんの賭けがどうなったかは、私たちだけの秘密…。」

そして、加藤登紀子さんの『時には昔の話を』が流れるエンドロールへ。歌が終わると、赤い飛行艇が雲の向こうへと消えていき、物語は終わりを迎える…。


…さて、このエンディング、絵コンテではどうなっていたのかというと、フィオの回想とその最中に流れるシーンが、映画とはやや異なっていました。途中まではほぼ一緒なのですが、フィオとジーナとの関係が続いている、という話のあとは、こうなっています。


今でも夏になると 私は休暇をホテルアドリアーノで
すごすことにしているの

マルコ・パゴット大尉がジーナさんの庭をおとずれたかどうかは、
私達の秘密

ハリウッドのスターになったミスター・カーチスは
大統領になった今も あの時のアドリア海がなつかしいと
時々手紙をくれるわ

ゴーッと飛ぶジェット機

ポルコを「マルコ・パゴット」と本名で呼んでいることや、なによりカーチスが大統領に【なっている!】という衝撃の相違が、「私たちの秘密」という台詞より後に配置されています。

そしてもうひとつ、「ラスト大改訂版」と銘打った、構成がすこし変わっている別のエンディング案もあるのですが、こちらの方はというと…


ピッコロ社をついだあとも
夏の休暇はホテルアドリーア(原文ママ)ですごすのが私の決まり

大きな戦争や動乱をくぐりぬけて
マダムジーナのお店は今もアドリア海の真珠と呼ばれている

マルコ・パゴット大尉がジーナさんのお庭を訪れたかどうかは、
私達の秘密

そうそう、ミスター・カーチスは大統領になった今も
時々、手紙をくれるわ

やっぱりカーチスが大統領になっている!

さて、この後の展開はというと、実は映画には全くなかったシーンが絵コンテにはあり、それが絵コンテ版のラストシーンとなっているのですが、それはまた次回、ご紹介したいと思います。
紅の豚 スタジオジブリ絵コンテ全集〈7〉】より


ちなみに、加藤登紀子さんの歌うエンディング曲『時には昔の話を』が流れる中、スタッフロールとともに出てくるあの挿絵ですが、

この絵の数々は以下の本『時には昔の話を』でゆっくり見ることが出来ます。






【こちらも併せてどうぞ】
『紅の豚』 絵コンテだけに存在する幻のラストシーン

「サン=テグジュペリを撃墜した」と告白した男とジーナ役・加藤登紀子さんの語る『紅の豚』

ポニョと宗介はどうなるのか?『崖の上のポニョ』には続編の構想があった!